一級建築士の目から見る「片づかない住宅」とは
「片づけの解剖図鑑」は、一級建築士として設計事務所に勤務をされている鈴木信弘さんの書かれた本です。
鈴木信弘さんは鈴木アトリエ一級建築士事務所の代表をされている方で、著作をされる以前から100以上の住宅設計を手がけられてきたという実績があります。
片づけノウハウ本の多くは賃貸住宅など限られた住宅設備の環境の中でどういった適応をしていくべきかというところを言及していますが、この「片づけの解剖図鑑」は全く逆の発想から一級建築士の目から見た「片づかない住宅とは?」というところから論をスタートさせています。
本を書くきっかけとなったのは建築士として仕事をしてきて20年を迎えたときに、出版社から住宅設計の小ネタをまとめたらどうかといった声をかけてもらったことということで、出版までに約2年という歳月を費やした力作です。
もともと氏は片づけについて本の中で言及をするというつもりはなかったようなのですが、出版時の「片づけブーム」に編集者が乗っかる形でタイトルをつけたということなので本来的にはよくある片づけマニュアル本とは種類が全く異なるものであると言えます。
ただ氏の気持ちとは裏腹に片付けマニュアル本の一つとして分類されたことでこの「片づけの解剖図鑑」は多くのメディアに取り上げられる人気書籍となり、住宅設備面から見る片付けの基本を知るために役立つ本として多くの読者を獲得しました。
どうやっても片づかない家は設計者が悪い
本の中でも少し触れられていますが、鈴木信弘さんは一級建築士として設計の仕事をしていく上で感じていたのが「設計者は片づけのことなんて考える必要はない」という業界の認識だったといいます。
建築士の仕事は空間を設計することであり、それを実際に使用する人がどう片づけていくかまで配慮する必要なんてないという考えで設計をしている建築士は非常に多いということです。
むしろ「片付けやすい家」といったコンセプトで仕事を使用とすると建築士仲間から「くだらないことを気にするやつ」といった見下しを受けることもあるということです。
そのあたりも私達一般の消費者からはわからない認識として非常に貴重な意見です。
片づけにくい住宅の例として、大きな窓がある家や、大きなテーブルがある家といった具体的な事例を出してくれており、一見便利そうな大きな押入れもそのせいで片づかない住宅になるという危険性を指摘してくれます。
片づかない住宅というのはそうなるべくしてなる理由があるということを建築士らしい分析で示してくれるので、感情論や感覚論ではなくもっと理論的に片づけという行為を分析したいという理系脳の主婦にとっておすすめの本です。